前回の投稿に引き続き、フレーム作りの話です。
素材
「BOUND CYCLES」をはじめるにあたって、まず着手しているのはアルミのディスクロード。
速さを求めるロードレーサーにおいて、クロモリディスクでは少し物足りないし、フルカーボンフレームを金型から作ることも一個人では難しい。アルミにしたからといって一個人でそう簡単に作れるものではないが、ありがたいことにこれまでの人脈から台湾のフレーム工場と繋がることができ、事業計画も通り銀行から融資もしてもらえることとなった。
アルミフレームは、僕が今求めている要素を全て満たしてくれる素材だ。
クロモリより軽くて硬いスピード感のある乗り味、カーボンのように金型を必要としないためチューブ選択や設計に自由度があること。オリジナルフレームをやるのであれば、どこかの工場が作ったフレームにロゴを貼り付けるだけのものにはしたくない。
アルミフレームと言っても幅があるが、自分の考える理想のエッセンスを具現化しやすい。マスプロメーカーが採用するような大口径チューブよりも一回り細身のチュービング、海外基準の設計では作らないようなジオメトリーなど、落としどころを探るのが面白い。
重心
自転車に乗っている時に、人は一定のポジションで走り続けることはまずない。ロードバイクの速さを数値で追求すると、空力性能、剛性、重量、転がり抵抗など、一定条件下での効率に行き着く。理想を言えばライダーも特定のポイントで、一定のリズムで漕ぎ続けることが最も速く走れる条件だろう。しかし、実際のライディングは、一定条件漕ぎ続けることは難しい。
乗り手は無意識のうちに身体を動かし、状況に適応している。
- 登坂では腰の位置を変え、使う筋肉を切り替える。
- 加速では前方に荷重を移し、ペダルへ力を伝える。
- コーナーでは身体と車体の傾きを調整し、タイヤの接地感を探る。
- 下りでは重心を低く、後方へ移動させ、安定性を確保する。
- 巡航では身体を落ち着かせ、空力と筋肉の効率を優先する。
つまり、ロードバイクは人間がただ座って動力を与える機械ではなく、人間の身体運動によって性能が変化する乗り物だ。路面状況、筋肉の疲労などに合わせて随時姿勢やポジションを変えていくことで、長距離走行や高速走行を実現していると言える。
最適な姿勢を決めるのではなく、最適な姿勢を選べるロードバイク
ある一点のポジションで最高の性能を発揮することよりも、ライダーが前後左右に身体を動かしたとき、その動作に車体が応えられることが大事だと考えるようになった。
いくつもの自転車を乗り比べる中で、クロモリにしてもカーボンにしても、バイク毎にスイートスポットが違うと感じてきた。
そのフィーリングをどこから感じているかと自問自答していった中でたどり着いたのはフレームの硬さの違い、厳密にはフレームチューブの素材特性やアッセンブリーによる影響が大きいと思えた。
今テストしているアルミロードレーサーは、その「重心移動」という観点から見ても非常に気に入った仕上がりになっている。
フロントに荷重をかければ食い込むように曲がり、抜けば軽やかになる。腰を前に動かせば加速しやすく、後ろに移せば落ち着く。
フレームによっては後乗りが調子の良いフレームや、前乗りが調子の良いフレームなど特性は様々だが、BOUND CYCLESのフレームではアルミの芯のある硬さを活かし、前乗り、後乗りを問わずスピードに還元できる力があり、走行時に車軸がブレる感覚はない。
これはバイクコントロールに長けた人間にとっても乗りやすいものだと思うし、まだ慣れていない人にとっても懐の深いフレームだと思う。
ロゴやデザイン、仕上げの調整。各サイズのジオメトリーやディテールの擦り合わせなど、市販品完成までの道のりはまだ長い。
それでも、皆に喜んでもらえる自転車になるように、引き続き頑張りたい。
