バーテープを綺麗に巻くことができるなら

「自転車屋」で働くことに憧れを持っている人も世の中にはたくさんいると思う。それとは対象的に、10数年自転車の世界に居ると「もう自転車屋は疲れたよ」って人もたくさん見てきた。少なくとも、僕は自転車屋という仕事をサイクリストにとって最高の職業にすることをまだ諦めてはいない。

自転車屋という仕事が難しい要因にはいろいろあって、まずは求められる要素が複合的であることが挙げられる。まずは「販売員」としての能力。知識や経験、コミュニケーションのスキルがあって初めてモノが売れるし、注文を受けることができる。ちなみに僕はこの販売員としての適正は非常に低く、苦手だと思っている。

もうひとつは「メカニック(整備士)」としての能力。これも一筋縄ではいかない。よほどお店の客層を絞った方針でなければたくさんの種類の自転車が修理(急患)として運ばれてくる。救急救命士のように限られた時間や設備の中で対処を求められることもあれば、集中治療室で細心の注意を払いながら丁寧に処置するような作業もある。レース現場ですばやく数十台の整備を求められるようなメカニック、高級店で1台に対して最高のクオリティで作業を施すメカニックなど、ひとえにメカニックと言っても求められる能力はバラバラだ。

メカニック適正。

自分はメカニックに向いているだろう。とか、逆に僕には絶対無理だと思う人もいるだろう。僕自身も実はそんなに向いているとは思っていない。けれども誰かが求めてくれるレベルで作業ができているのであれば、僕はこの世界の礎になるべくやり続けるだけだとも思っている。(若さ、才能、能力を持った人がもっと増えれば必然的に(適正)能力の低い者は不要になるだろう)

これからメカニックを目指したいと思う人達がいたとして、適正を判断するべき基準はなんだろうかとふと思って今この日記を書いている。真面目さとかトルク管理だとか知識とか色々あるとは思うものの結論は「バーテープを綺麗に巻けるかどうか」だと思った。否定的意見も多々あるかもしれないけど、仕上げる丁寧さ、均等にするバランス感覚、引っ張る強さ、数字で測れないこの作業はまさに「技術」と「経験」の成せるものだと思う。

不思議なことにベテランショップスタッフでもお世辞にも綺麗に巻けていない場合も見るし、その逆にお客さんのバイクで驚くほど綺麗で自分で巻いたというものも見る。僕は言いたい。バーテープを綺麗に巻ける人間はバイクメカニックを目指すだけの適正を持った人間だと思う。

このエントリーをはてなブックマークに追加