「ケーブル交換お願いします!」というメンテナンスの依頼が途絶えることはほとんどない。ケーブルはブレーキや変速を司るので常に消耗や変形と隣り合わせとなっているからだ。
消耗してシフトワイヤーが切れてしまった経験はロードバイク乗りなら一度は訪れると思う。しばらく使い続けたバイクのブレーキの動きが凄まじく重くなった経験もあると思う。
それらはやはりケーブルの痛みや消耗なので交換することで解決できる。(できない時もある)
古くなったケーブルは潤滑剤が切れてしまい、とにかく抵抗が大きい。常に状態の良いケーブルを使うことが快適な自転車ライフを送る秘訣だ。しかし、ケーブルの長さやカットの処理なども動きのスムーズさに多大な影響を与えることは理解しておいて欲しい。
ショップにて
「ブレーキケーブルの交換をお願いします!」
そう依頼が入ると簡単な見積もりは下記のような感じ。
- ケーブルセット 前後分 約1600円
- 工賃(1カ所) 1000円x2
ブレーキの前後のケーブルを新しくする作業は部品代と合わせて約4000円程度。当然良いケーブルを使うともっと高くなる。(これにバーテープ交換は含まれない)
ケーブル交換は工具さえあれば自宅でも作業は可能だが、「これはちょっと…」と思うバイクが多いのも事実。ブレーキのシューが逆に付いている人すら居る。余程の自信か探究心がないのであれば、命に関わるブレーキは信頼できるメカニックにお願いするのが得策だろう。
“ケーブル交換”と言うと長さを適切にカットして差し替えるだけ(に思われる)だが、僕らはお客さんがケーブル交換を依頼する意図をちゃんと把握しなければいけない。
お客さんはケーブル交換を依頼しているが、その本質は「ケーブルを交換したい」のではなく「ブレーキの動きを良くしたい」といった実働面での改善を求めている場合が多いと思う。なのでケーブル交換という作業だけにフォーカスしていてはいけない。
ちょっとだけ例も紹介してみる。
ブレーキのパッドが無くなっていることもある。この時はパッドの交換を提案する。
ケーブルは新品でもブレーキの動きが渋い。そんな時はブレーキが汚れや砂まみれとなっている時が多い。そんな時はケーブル交換しつつ、ブレーキ本体も綺麗に洗う。そしてオイルも注す。
とにかく自転車は綺麗な状態の方が動きは良い。汚れていて得はない。
もし「ケーブル交換」だけにフォーカスしてしまった時、ブレーキが効かないことや動きが悪いことが解決できないなんてこともある。
自分が病院に行く時に、求めていることは「薬が欲しい」のではなく「病気を楽にして欲しい」というような状況と似た感じだろうか。
ブレーキではなく変速にしてみても同じようなことが言える。というかブレーキ以上に影響を及ぼす部分が多いので「変速の改善」は奥が深い。
上の写真のようにディレイラーハンガーが緩んでいることもあれば、
どこかにぶつけて変形している事がとにかく多い。(なので予備のディレイラーハンガーを常備しておく事は強くオススメしたい)
他にも多いのがスプロケットの取り付けが弱い、スプロケットのスペーサーが不足している、ハブにガタつきがある、等々リアの変速だけでも点検カ所は多い。
これは作業前の状態のフロントディレイラー。ワイヤー交換の際に、僕は変速調整だけでなくフロントディレイラーの再取り付けから作業することにした。
しっかりと見比べてもらうとチェーンリングに対しての角度が違うことがわかる。
正直なところ、上の状態でも動いてしまうのが現行パーツの性能の高さを感じさせる部分だが、100%の性能を発揮できているかと言われるとNoとなってしまう。
動いていればOKという人は少なくないが、折角の高級な自転車はしっかりと整備してあげて欲しい。信頼のおけるメカニックに依頼すれば、快適なバイクに仕上げてもらうことが出来るし、僕らメカニックはご飯を食べることが出来るのでお互いにとって幸せなように思う。
八重洲出版 「ロードバイクのメンテ徹底ガイド」(amazon)
メカニックに任せきりにせず、自分でもある程度の理解をしておくと出先でのトラブルに対処もできるし、何より乗ってる時のバイクの扱いも丁寧になるかも?
一度はメンテナンス本に目を通して損はない!